週刊誌時評

ここでは週刊誌から話題の情報をピックアップしてご紹介します。みなさんが週刊誌に親しみを覚え、社会問題に関心を抱くきっかけになれば嬉しいです。主におじさん週刊誌を紹介しますが、柔らかくしているのでちびっ子も安心です。月曜・火曜・木曜に更新予定です。

週刊誌時評『週刊現代』(7/9)

top_hon_03.jpg 今週の『週刊現代』が、原発関連記事で、考えさせる記事をいくつか書いていたので、久しぶりに「週刊誌時評」を。
で、週現の主な記事はこちら。

1 もっと細かく全国1000ヵ所を独自調査 実測数値を全掲載 
2 福島の「放射能汚染」を調べ続ける科学者・木村真三氏

3 鎌田慧「僕は原発を止められなかった」
4 すべてはここから始まった
■キュリーとベクレル、その呪われし運命

1は、以前から独自に線量計をもって各地の放射線量を測っていた週現スタッフが、より細かく測定したレポート。千葉や都内の高線量地域のことなど報じており、なかなか貴重なデータか。そんななか、元京大原子炉実験所講師の方のコメントに驚いた。「原発には必ず高い煙突がありますが、あれは基本的に、煙ではなく放射性物質を出すためのものです」。なんでも、いくら頑丈に作っても、放射性物質をまったく出さないようにはできないという。だから高い煙突を作ってそこから出すことで、希釈されることを狙っているのだそうだ。事実、放射性物質を高いところから放出するためか、週刊現代が調べたところ浜岡原発3キロ地点でもそれほど高い線量は出ていない。ふーむ。

2は、放射線衛生学の研究者・木村真三さんの記事。木村さんはNHK教育で放送された「ネットワークで作る放射能汚染地図」でもご存じの人多いと思いますが、独立行政法人に勤務していたけど、あの事故の後、個人的な調査を禁じられたので辞職して独自で調査されている方。今は、完全ボランティアで各地の線量を測り講演など続けておられるという。現地の方に「作付可能になるまでものすごく時間がかかる」と説明するのは「本当に辛い」とのこと。国がやるべきことなのに頭が下がる。木村さんの著書、ぜひどこかで出して欲しい。印税が活動の手助けになればと思う。

3は、長年、反原発のルポをされてこられたルポライターの鎌田慧さんの寄稿。取材のなか、もともと原発反対だった人たちが、どうやって原発賛成へと変わって行くのかを書いておられて、考えさせられる。そう、原発問題って、結局、地方の雇用とか産業の問題につながるんだよね。元気で仕事もたくさんある地方には原発はないもの。「原発建設のターゲットとされているのはいずれも過疎地で、行政から切り捨てられた土地です」。このあたりも考えなければいけない。

4は、放射能の原点ともいえる、二人の科学者とその当時の物語をわかりやすく書いた良記事。今、毎日のように耳にする「ベクレル」というのは、19世紀末のフランスの科学者アンリ・ベクレルから採っているんですね。彼が人類史上初めてウランが発する放射能を発見。そして伝記などで知られるキュリー夫人は、ラジウム、ポロニウムというふたつの放射性物質を発見して2度のノーベル賞を受賞したわけですね。このあたりの事実は、知っていても、その後のことを知らない人は多いと思う。
結論から言えば、ふたりとも被ばくが原因でこの世を去る。キュリー夫人が遺した研究ノートは放射能まみれで、今でも触るのが危険だという。このように放射能が発見された当時は、その危険性が認識されておらず人類に幸せをもたらす魔法の物質と喧伝されていて、驚くべきことに放射性クリームとか放射性歯磨きなんてのも商品化されていたという。こういった話とともに、心に残ったのが、日本最初の原発・東海1号が輸入されたときの物理学者・武谷三男の言葉だ。
「原発は、危険だと言う人が扱ってこそ、辛うじて安全なものができる。安全だと言う人が扱えば、こんな危険なものはない」
先人のあまりに説得力に満ちた言葉ではないでしょうか。言葉の意味をもっと噛み締めよう。

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